おかあさんの参考書

「子どもを伸ばそう、変えよう」より、
「人間同士として付き合おう」くらいのスタンスで

親野智可等

「子どもを伸ばそう、変えよう」より、<br>「人間同士として付き合おう」くらいのスタンスで

●共感がないまま、子どもに“塩対応”する親

子どもが泣いていました。

道を歩いていて、止めてあった自転車にぶつかったようです。

すると、近くにいた母親が「ちゃんと前を見てないからでしょ。まったく! もっと気をつけて歩かなきゃダメでしょ」と言いました。

 

ああ、なんて冷たい対応なんでしょう。

まさに“塩対応”です。

これでは、子どもがかわいそうです。

 

こういうとき、まずは痛い気持ちに十分に共感してあげることが大事です。

まずは、「痛かったね~」と言ってあげてください。

何か言うべきことがあったら、共感の後に言うようにします。

こういう対応なら、子どもは「自分がどんなに痛かったかわかってもらえた」と感じることができて、心が安らかになります。

自分の気持ちをわかってくれる親が大好きになります。

親を信頼する気持ちも出てきます。

 

これは勉強についても同じです。

「宿題しない」「勉強しない」「成績が上がらない」などということで、塩対応になっている親がたくさんいます。

宿題や勉強をやりたくない気持ちや成績が上がらない苦しさに共感することなく、「勉強しなきゃダメでしょ」「もっとがんばらなきゃ合格できないよ」「口だけでなく言ったことは実行しなさい」などと責めたり……。

●親が子どもに塩対応になる理由

では、なぜ、多くの親たちがこういう対応になってしまうのでしょうか?

愛情がないのでしょうか?

いいえ、そうではありません。

愛情はあるのですが、同時に、親としてわが子に「○○させなければ」「勉強させなければ」「学力を上げなければ」「○○できるようにしなければ」「しつけなければ」という思いが強くあるからです。

そして、この思いが強ければ強いほど、否定的な言葉で叱ることが増えます。

それによって、子どもは親の愛情を疑うようになり、「愛されていない」「大切にされていない」と思い込むようになります。

すると、ますます親に対して反発するようになります。

それで、親もさらに叱ることが増える、という悪循環……。

こういうパターンで親子関係が壊れる例が非常に多いのです。

というか、ほとんどがこれです。

●「伸ばさなければ」より「人間同士として付き合おう」くらいの気持ちで

そうならないためには、どうしたらいいでしょうか?

私が提案しているのは、「親として子どもをしつけなければ」「子どもに○○させなければ」「○○を直さなければ」「子どもを変えなければ」「子どもを伸ばさなければ」という思い込みを一度脇に置いてみることです。

 

「直さなければ」「変えなければ」「伸ばさなければ」という気持ちの中には、子どもに対する微妙な否定があり、それはどうしても否定的な言葉として表れるからです。

それよりも、これからは「この子と楽しく過ごそう」「人間同士として付き合おう」「一緒に仲よく生きていこう」くらいのスタンスで臨むようにしてみてください。

そうすると、自然に肯定的な言葉が増えます。

●子どもを「天からの授かりもの」だと思っていると遠慮がなくなる

子どもも当然ながら一人の人間です。

あなたが掛け替えのない一人の人間であるのと同じように、子どもも掛け替えのない一人の人間なのです。

しかも、これから何十年も生きていく上での一番大事な時期を、親がお預かりして、育てさせていただいているのです。

 

子どもは天からの授かりものではなく、預かりものなのです。

お預かりして、育てさせていただいているのです。

一人の人間が一人の人間を「授かる」、つまり「もらう」などということはあり得ないことです。

 

ところが、「多くの親たちはお預かりしている」というようには思っていません。

もらった気になっています。

それで、ほとんどの親が、子どもを自分よりもはるかに下の存在として見てしまうのです。

なかには、自分の付属物のように思っている人もいます。

だから、遠慮がなくなります。

親という圧倒的な権力に溺れて、やりたい放題になってしまう人もいます。

●子どもを一人の人間としてリスペクトしよう

そうならないために、「自分の子ども」ということに重点を置くのではなく、「一人の人間」ということに重点を置いてみてください。

すると、子どもをリスペクトする気持ちが出てきます。

それによって、自然に言葉も丁寧になります。

冒頭のような場面でも、「ちゃんと前を見てないからでしょ。まったく! もっと気をつけて歩かなきゃダメでしょ」などという乱暴な言葉は出なくなります。

 

もちろん、子どもが人に迷惑を掛けたり、危険なことをしたりなど、よからぬ行動をしたときは放っておいてはいけません。

親としてしっかり導かなければなりませんが、一人の人間としてリスペクトしながら導くことが大事です。

感情的かつ否定的に叱るのではなく、穏やかに言って聞かせる、わかるように諭す、こういうことが大事です。

誠心誠意、心を込めて伝えてください。

 

リスペクトしている相手には、それにふさわしい言葉が出てくるようになります。

子どもも、親が自分をリスペクトしてくれて、大切にしてくれているのを感じます。

すると、子どもも親をリスペクトするようになります。

親が子どもを見下していれば、子どもも親を見下すようになります。

自分から出たものが自分に返ってくるのです。

 

子どもは侮れない存在です。

甘く見てはいけません。

全身全霊であなたのことを見ています。

●「人間同士として付き合おう」に変えると、気持ちにゆとりが出る

大切なことをもう一度言います。

 

「親として子どもをしつけなければ」「子どもに○○させなければ」「○○を直さなければ」「子どもを変えなければ」「子どもを伸ばさなければ」ではなく、「この子と楽しく過ごそう」「人間同士として付き合おう」「一緒に仲よく生きていこう」くらいの気持ちでいましょう。

すると、気持ちが楽になってゆとりが出てきます。

子どもと日々向き合う上で、このゆとりほど大切なものはありません。

 

親にゆとりが出ると、子どもへの否定的な言葉が減り、反比例して肯定的な言葉が増えます。

なぜなら、子どものしょうもない姿も可愛いと思えるようになるし、今まで見えなかったよいところが見えるようにもなってくるからです。

もちろん、瞬間的にキレて叱りつけることもなくなります。

こうなってくれば、子どもは親の愛情を実感できるようになります。

すると、親子関係がよくなって、いろいろなことがうまく回り始めます。

著者プロフィール

親野智可等
親野智可等
おやのちから

教育評論家。1958年生まれ。本名 杉山 桂一。公立小学校で23年間教師を務めた。教師としての経験と知識を少しでも子育てに役立ててもらいたいと、メールマガジン「親力で決まる子供の将来」を発行。具体的ですぐできるアイデアが多いとたちまち評判を呼び、新聞、雑誌、テレビ、ラジオなど各メディアで絶賛される。また、子育て中の親たちの圧倒的な支持を得てメルマガ大賞の教育・研究部門で5年連続第1位に輝いた。読者数も4万5千人を越え、教育系メルマガとして最大規模を誇る。ブログ「親力講座」も毎日更新中。『「親力」で決まる!』(宝島社)、『「叱らない」しつけ』(PHP研究所)などベストセラー多数。人気マンガ「ドラゴン桜」の指南役としても知られる。長年の教師経験に基づく話が、全国の小学校や幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会で大人気となっている。

教育評論家・親野智可等 公式ホームページ『親力』


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